歯を失いたくない方、歯周病について正しい知識をご理解下さい。
通常の歯周病治療、「歯のお掃除」「ブラッシング」だけではどんなに頑張って歯科医院に通っても良くなっていくことはありません。
感染症ですのでどんどん進行は進む一方です。
いまのままではまもなく歯を失ってしまいます。
日本では50代になると歯のなくなる人が急激に増えています。
80代にもなると60パーセントの人がすべての歯をなくしています。
その原因は虫歯になったら"削っては詰める"というこれまでの治療法にあります。
歯が痛くなってから歯医者に行く・・・これでは全くの手遅れなのです。
「もう少し早く来てくれたら・・・」そんな患者さまを毎日目の前にするたびにそう叫ばざるを得ません。
歯は手入れをしなければ確実になくなってしまいます。
虫歯の原因は歯垢(しこう)。
口の中には排水溝と同じ汚れが広がっている、とお考え下さい。
歯は年を重ねるとともに抜けていくのが自然と思われていました。
しかし、口の中を清潔に保っていれば、100歳くらいまで元気な歯を持ち続けることができると言われています。
しかし、常に飲んだり食べたりしている私たちにはなかなかそうはいかないのが現状です。
ではどうすれば私たちは自分の歯を一生健康に保つことができるのでしょう。
まず第一にお口のなかのことをよく知る、それが第一歩です。
歯周病でお悩みの方に
どうにかしてあなたのそのお口の苦労を取り除いてさしあげたい。
歯を抜くしかないと言われた方、歯周病ですと宣言された方、
入れ歯でかめない、しゃべることが困難、いつも不快感・・・
そんな出口のない迷路に入り込んでしまった方のためにこのサイトは誕生しました。
どうぞお読み下さい。
「どうして、ここまで悪くなる前に治療に来られなかったのですか?」
歯科医院に行って、このように言われたことはありませんか。
多くの患者さまが歯科医院に来られる理由は、歯が痛くなってたまらなかったから、または、歯周病で歯がグラグラになってちょっとさわっただけでも痛くなったから、がほとんどです。
もっと早く治療すれば、治療方法にも選択肢があったかもしれません。
しかし、一度失った歯はもう二度と生えてくることはありません。
そのことを患者さまは知らなかった、またはかかりつけの歯科医師がその重要さを教えてくれなかった、ということがほとんどなのです。
または知ってはいたが、すぐには治療に行かなかった、これが実情なのです。
「この歯は、もう抜くしか手はありません」
歯科医師にこう宣言されたことはありませんか。
さあ、はっきりさせましょう。
お口の中がどうなっていて、どのようにすればキチンとなるのか。
本当の事を「知る」。
それだけで、悩みのほとんどが消え去り、グッと快適で豊かな人生が近づいてくるのですから。
もしあなたが歯を失ってしまい、歯科医師に「もう抜くしかない」と宣言された方だといたしましょう。あなたは、いままで、数件の歯科医院にかかり、そして延べ何百回も通院して、そして残念ながら今のお口の状態になってしまった、というのが本当のところではないでしょうか。
また、人によっては、「自分が歯の手入れを怠ったからだ」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
しかし、私は思うのですが、「本当にきちんとした歯科治療を、しかるべき歯科医院でお受けになっていれば、こんなに多くの歯を失う事はなかった。」
とはいえ、この「しかるべき歯科医院は、ほとんど少ない」、ということも事実なのですが。
あなたはお口の中が一体どうなっていて、どうすれば本当によくなるのか「知らなかった」から、「歯科医師の言いなりになる」しかなかった。
そしてその先生を信用して、治療を何十年も続けてもらった結果、あなたさまの大切な歯がなくなった・・・。
「知る」ことが、最も大切です。
そしてもう一つ言うなれば、今も大きく悩んでおられるとするならば、お口や入れ歯の問題で「何がどうなって、そしてどこでどうすればいいのか分からない」ということで、悶々と悩みの中にあるのではないでしょうか。
こんなことでは、「明るい未来」や「よりよい人生」などを希望しても、どんどん無意味な時間が流れていくだけです。
まず歯を失う一番の原因を知って下さい。
このような症状で歯科医院に駆け込んだ・・・。
こんな症状ではありませんでしたか?
歯を失う大きな原因の一つは「歯周病」です。
多くの患者さまは、こんな状態になってはじめて「こんなことになるならもっと早く教えて欲しかった」と、助けを求めてお越しになります。
また、虫歯だと思って来院された方の80パーセント以上の患者さまが歯周病が進行しているケースが非常に多いのです。
虫歯と違って歯周病には痛みがありません。
痛くないので気が付きません。
ですから長い年月をかけてその恐ろしい病気はどんどん進行し続けます。
歯を失う原因の一番はこの歯周病という病気です。
この魔の病気は、じっくりじわじわと痛みなく進んでいきます。
本当に恐ろしい病気ですが、ほとんどの方にその意識はありません。
突然ですが、あなたさまに質問です。
あなたさまの歯を支えているのはいったい何だと思われますか?
私が診療の際に患者さまにお聞きする質問です。
多くの方は思わずキョトンとされ、「え〜と、歯ぐきですかねえ?」とお答えになられます。
しかし、答えはなんと「骨(ほね)」なんです。
詳しくは「歯槽骨(しそうこつ)」といいますが、歯をしっかり支えているのがこの骨なのです。
つまり基礎です。
家でも何でも基礎がきっちりしていなければ、少しの地震や台風ですぐ壊れてしまいますよね?
歯周病というのはこの基礎となる骨が、ばい菌によって溶けてなくなってしまう恐ろしい病気のことなんです。
骨が溶けて、歯が抜けてしまったら・・・・・・
残念ながら一度溶けてなくなってしまった骨はもう二度ともとに戻ることはありません。
ある日突然何本も歯がグラグラして抜けそうになってあわてて歯医者に飛び込んだ、という方もたくさんいらっしゃいます。
私の医院に「なんとか助けて欲しい」と駆け込んでこられた患者さまにお聞きすると、今までどこの歯医者さんに行っても「歯周病ですね、と言われたことなんて一度もなかった!」とおっしゃられる患者さまはたくさんおられます。
なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか?
なぜ、こんなになるまで患者さまはご自分が歯周病である、ということに気がつかなかったのでしょうか?
それは実は患者さまだけに問題があるわけではないのです。
残念ながら日本の保険制度に問題がある、と私は考えています。
日本の保険制度では、歯科医師は「悪いところを削って詰める」「歯を抜いて入れ歯にする」ことしか、保険として認められていなかった、のです。
歯周病の治療とは、つまり歯周病の原因となる歯垢(プラーク)をプロの手によって確実に除去していくことが一番大切なのです。
しかし、残念ながら「歯垢を除去する」という行為は日本の保険制度では十分認められていません。
つまり「予防が必要」とうたっていながらも、その行為に対して保険制度は、軽い形だけでの扱いでしか適応されないのです。 あなたさまも経験がおありになるかと思います。 虫歯ができたのであわてて歯医者に行った。 診療台に横になって、虫歯の部分を削って詰めてもらった。
そして何年かしたらまた同じようなところが虫歯になったのでまた歯医者に行って、削って詰めて・・・・
この繰り返しを何度もやってこられたのではないでしょうか?
歯を削って詰めて、また削って・・・歯医者さんといえばそんなイメージばかりありませんか?
しかし、覚えておいて下さい。
一度削ったり抜いたりした歯は二度と元には戻りません。
こんなことを繰り返していればご自分の歯が残るわけはありません。
歯を失った方が、「もう一度自分の歯で肉を食べたい」、涙ながらにおっしゃられた言葉を忘れることができません。たった1本の部分入れ歯でさえ、食事の味は変わります。
髪の毛一本が口に入っても違和感を感じるのが人間です。
日本では今、80歳で20本の歯を残そうというスローガンを掲げています。
しかし、実際に80歳の方の歯の残存数はなんと、8本、です。
たった、8本、です。
8本の歯で一体なにが美味しく食べられるというのでしょう。
歯医者には虫歯になってから行けばいい、そんな意識があたりまえになっている国はもはや日本だけではないのでしょうか?
先日もオーストラリアで長年過ごされていたご夫婦とお話している時に、歯の治療で何百万もかかったので、歯のメインテナンスには細心の注意を払っているよ、という話を聞きました。
欧米諸国では「虫歯になってから歯医者にいく」のではなく、「虫歯に絶対ならないように歯医者に行く」のです。
いかがでしょう。この意識の違いです。
あなたさまの寿命はおいくつぐらいだと思われますか?
「そんなのわからないよ!」と思われるかもしれません。
しかし、今、あなたさまの周りを見回してみて下さい。
80歳を過ぎてもお元気で楽しく人生をお過ごしの方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?
日本はいまや世界一の長寿国です。
人生80年は、もうあたりまえ、の時代がやってきました。
しかし、歯の寿命はどうでしょう?
ここで歯科医師会が行っている調査の結果をお話しましょう。
日本歯科医師会では8020(ハチマルニイマル)をスローガンにしています。
これは何かと申しますと、80歳で20本の歯が残っていれば美味しく食べ物を食べることができ、健康に生きられる、ということです。
しかし現実に80歳の平均残存歯数はたったの8本です。
8本あればまだいいほう、かもしれません。
たった歯8本でいったい何が食べられるというのでしょう?
パリパリとみずみずしい野菜を噛み切りその食感を味わうことができるでしょうか?
大好きなうどんを勢いよくすすりこんで、のど越しと香りを堪能することができるでしょうか?
ステーキを奥歯でかみ締めて、あふれ出てくる肉汁を味わうことができるでしょうか?
答えは否、です。
食欲は、生きるものとしての本能です。
そして生きていく中で、「美味しく食べられる」ことは最大の楽しみでもあります。
どんなに素晴らしい入れ歯でも、違和感はあります。
しかし、やはり、入れ歯、なのです。
人生80年当たり前の時代がやってきました。
寿命は80年だとしても、歯の寿命は40歳代・・.・と申し上げたらあなたさまは驚かれるでしょうか?
しかし、それは本当です。
最近はよくテレビでも紹介されるようになり、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。
ご自分の歯が多く残っていらっしゃる方ほど、お元気で意欲的なのです。
実際に調査を行っていくとご自分の歯をほとんど失い、入れ歯で生活されていらっしゃる方は痴呆にかかりやすい、ということがわかっています。
「よく噛んで食べなさい」
私達は子供のころからそうやって教わってきました。
なぜだと思いますか?
よく噛むと、なぜいいのか?
効用は以下のようなことがあります。
しかし、あなたさまはこう思われるかもしれません。
「入れ歯だって噛めるじゃないか!」
もちろん噛めます。
しかしこの違和感!
入れ歯のデメリットを申し上げると次のようなことがあります。
1.噛む力が非常に損なわれる
普通の入れ歯では天然歯の20分の1程度の噛む力しか得られない。
名人と言われるような歯科技工士が作った保険適応外の高額の入れ歯でも天然歯の5分の1ほどしかありません。
2.認知症(いわゆるボケ)になりやすい。
認知症になる高齢者の90パーセントが入れ歯という恐ろしいデータがあります。
認知症の原因として、脳が萎縮するアルツハイマー型と脳血管障害型があります。
このうち入れ歯と関係するのはアルツハイマー型で、入れ歯によって、噛む力が極端に低下することも原因と考えられています。
3.自律神経失調の原因になる
入れ歯はレジンという硬いプラスチックを使いますが、使っているうちに磨り減ってきます。
すると噛み合わせが次第に低くなり、アゴの位置がズレてきます。
アゴの位置がズレてくると首の頚椎にもズレが生じ、頚椎のなかにある太い神経と血管が圧迫されることになります。
この神経は脳とつながっており、自律神経失調症の原因にもなります。
4.歯医者通いが一生続く
入れ歯を使えば使うほど、アゴの骨が吸収されていきます。
早い方では1年もするとアゴの骨が吸収され、入れ歯が合わなくなってきます。
そこで新しい入れ歯を作り治すことになりますが、これがエンドレスに生涯にわたって続きます。
5.老人性顔貌になる
アゴの骨がどんどん吸収されることで、口の周りにシワが寄ってきます。
これがいわゆる「老人性顔貌」といわれるもので、審美性が非常に損なわれ、実年齢よりも老けて見えてしまいます。
6.ブリッジは健康な歯を削る必要がある
ブリッジは真ん中のダミーとなる歯を支えるために、健康な歯を削らなくてはなりません。
さらに、歯というものは垂直的な力には強いのですが、斜め下に引っ張られる力には弱く、ダミーの歯を支える歯には斜め下の力がかかってきます。
この状態で長く使用すると、両サイドの歯が緩み、最後には抜けてしまう、ということになってしまいます。
7.入れ歯は、健康な歯をドミノ倒しのように抜いていく
入れ歯はクラスプというはり金を健康な歯にひっかけます。これが、クギ抜きと同じ作用をします。
力強く咬めば咬むほど、このはり金が健康な歯にクギ抜きのような横ゆれの力を加えて、順に抜いてゆくのです。
入れ歯の本数が多くなればなるほど、クギ抜きの力は強くなります。
転プク力といいます。
これを少しでもやわらげるために、反対側の歯にまで引っかけを延ばすのです。最初になくなった歯とは全く関係ない反対側の歯まで、なくなっていくのです。
こうした入れ歯やブリッジのデメリットを解消する方法として、インプラントが脚光を浴びています。
歯を失いたくない方、またはもうすでに歯を失ってしまった方も、健康で充実した人生を、お口のことでお悩みのない毎日を過ごして頂けることを願ってやみません。
歯周病とは、歯の周りの組織、つまり歯を支える骨や歯肉などの病気です。
ですから、むし歯などの歯の病気ではありません。
歯周病の恐ろしいところは、痛みがなく何の自覚症状もなく進行するところです。
「私は昔から歯が丈夫でねえ。全部自分の歯だよ、わっはっは」と常に思っていらっしゃる方でも、安心はできないわけです。
歯が丈夫だから絶対安心と思っていたら、ある日突然歯がグラグラしてきていきなり何本も歯が抜けてしまった!という方も多くいらっしゃいます。
繰り返しますが歯周病は、むし歯などの病気とは直接関係のない、歯の周囲に起こる病気なのです。
歯周病は今や日本では歯を失う一番の原因です。
では、歯周病にはなぜなるのでしょうか?
歯周病は歯周病の原因となる歯周病菌による感染症です。
ですので、感染に対する治療を行わないと絶対に治りません。
歯科医院に行って「歯周病です」とドクターに言われました。
でも、「よくブラッシングしておいて下さい」とか、
「歯石を取るお掃除をしましょう」とか、
そういう治療しかされたことがない方がほとんどではないでしょうか?
繰り返します。
歯周病は感染症です。
細菌ですのでどんどん移っていきます。
歯のお掃除をちょこちょこした程度では、残念ながら治ることはありません。
最近では、予防歯科ということがよく言われています。
歯医者さんに3ケ月に一回程度通い、定期的に歯石を取って、歯の奥のバイキンを除去していけば歯周病にはならない、というものです。
これは現在、歯周病でない人には非常に有効です。
しかし、もうすでに歯周病にかかってしまっている方には、はっきり申し上げて歯周病の治療とは到底言えるものではないでしょう。
現在、日本では成人の約9割の人がなんらかの歯周病になっていることがしられています。すでに国民病といっても過言ではありません。
また、自覚症状がほとんどありませんので、歯周病になっているのに気がついていない人がたくさんいます。
こんな状況で、今、お口の中に歯周病菌がまったくない人はどれだけいますでしょうか?
歯周病についてもう少し詳しくお話しましょう。
先ほども申し上げました通り歯周病は感染症です。
お口の中にいるばい菌が原因で歯の周辺の組織をダメにしていく病気です。
人間の口の中には数百種類の細菌がいます。
その中には口の中の環境を保つのに必要な細菌もたくさん含まれています。
ですから、むやみやたらにうがい薬で消毒をすることはこの必要な菌も殺してしまうことになりますのでおすすめしていません。
長期的には菌交代現象が起こり、殺菌剤で死なないばい菌だらけになる恐れもあります。
この400種類の細菌の中で、歯周病の原因にはこの6つが代表的なものです。
1.Actinobacillus actinomycetemcomitans (A. a.菌)
小さな球形に近い、非運動性、非芽胞産生性、糖分解性、好二酸化炭素性、通性嫌気性、グラム陰性の、両端の丸い桿菌。
限局型若年性歯周炎の病巣から比較的高率に検出され、 健康な、あるいは軽度にしか罹患していない患者の歯肉縁下プラークからの検出率は低いとされています。
2.Porphyromonas gingivalis (P. g.菌)
黒色色素産生性バクテロイデス属に入り、これらは 偏性嫌気性、グラム陰性、非芽胞産生性、 非運動性桿菌で、血液培地で増殖すると、褐色あるいは 黒色に着色したコロニーを作ります。
進行した成人性歯周炎の病巣から、また、広汎型若年性歯周炎の病巣からも分離されます。歯肉の炎症の程度と歯肉縁下プラークに占める本菌の 比率との間に相関関係があることも明かにされています。対照的に健康人あるいはまだ歯周炎に罹患していない 歯肉炎患者の歯肉縁下試料からは まず検出されません。
3.Prevotella intermedia (P. i.菌)
同様に黒色色素産生性バクテロイデス属に入り、進行した歯周炎患者のポケットから、しばしば多数のP.gingivalis と一緒に分離され、 単独に存在することは稀です。
P.intermedia は歯肉炎患者および健康な歯周組織を持つヒトの半数以上に存在しています。
4.Tannerella forsythensis (旧 Bacteroides forsythus、T. f.菌)
グラム陰性、非運動性、初期には球菌様を呈する 嫌気性桿菌であるが、時間が経つと、通例、先のとがった両端と膨れた中心部を示すようになる。
本菌は歯肉炎や健康部位、または疾患の軽快した部位に 比べ、歯周組織破壊の激しい部位で高率に検出される。また、表在性や非活動性の病巣よりも、深在性で活動性の歯周病病巣でそれが顕著である。難治性歯周炎の指標として重要な菌種です。
5.Treponema denticola (T. d.菌)
スピロヘータは、長くて細いグラム陰性嫌気性菌で、歯周病羅患部位の歯肉縁 下プラーク試料からしばしば分離されます。人の腸管や泌尿・生殖器表面からも見つかり、いくつかの種は梅毒のような重篤な感染症の原因菌です。
歯周病の病理発生における口腔スピロヘータの役割についてはまだよく解っていませんが、最も頻繁に分離される T.denticola については盛んに研究されており、歯周病の活動度や重症度と関連している、あるいはこの菌が免疫抑制作用に関わっているという報告などがあります。また、治療された患者でスピロヘータの割合が高いと、それが低い場合よりも再発しやすいとの報告もあります。
6.Fusobacterium nucleatum (F.n.菌)
Fusobacterium nucleatum(F.n.)は、線状の長いグラム陰性嫌気性菌で、デンタルプラークなどでは大きな体積比率で存在しています。ヒトの口腔内に常在 し、菌の両端が尖って中心部がやや太いことから紡錘菌とも言われます。
F.n. は、歯周病原性菌の1つで、デンタルプラーク形成に中心的役割を担って い て、他の細菌と共凝集することによりバイオフィルムを形成します。
P. g.菌、T. f.菌、T. d.菌の3種類の組み合わせは、RED complex と呼ばれ、重要視されています。
歯周病にも大きく2つに分かれます。
歯肉炎は原因である歯周病菌を歯ブラシなどで除去すればよくなりますが、歯周炎は専門的な治療をしない場合、最終的には抜け落ちて入れ歯になることもあります。
まず、歯肉炎ですが、おもに以下のような診断があります。
歯周病にもいくつかの診断があります。
ほとんどの方が自覚症状がありません。
むし歯で歯医者に行ったら「歯周病が進行している」と言われてびっくりした、という方がほとんどです。
歯周病、特に歯周炎の問題は、歯を支える骨がどんどん溶けてなくなってしまう病気です。
しかし患者さんが困って歯科医院に駆け込みたくなる症状、つまり「痛い!」、「はれた!」、「噛めない!」といった症状はかなり進行した状態でないとあらわれません。
ですので歯科医院にいらした際には、「もうすでに手遅れ」の状態の方が多いのが現状です。
歯周病には自覚症状のない方がほとんどです。
上記の症状に思いつく方はお早めに歯周病専門の医師をお訪ね下さい。
メタボリックシンドローム 歯周病 |
「肥満」と関係、動脈硬化を促進
(写真左)西村 英紀 教授 歯の病気と思われた「歯周病」が、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の元凶である「肥満」とも密接に関係していることがわかった。一方、重度の歯周病では、動脈硬化を促進することも明らかになってきた。従来、糖尿病との関連が指摘されていたが、最近の研究では、こうしたさまざまなデータから、むしろメタボリックシンドロームの「合併症」としてとらえることが重要ではないか、という見解が広がりつつある。
広島大学大学院医歯薬学総合研究科の西村英紀教授との出会いから始まる。
最近はテレビコマーシャルなどでもよく紹介しているので「歯周病」という病気の存在が知られるようになりました。また、全世界で最も患者が多い病気は歯周炎などの歯周病である、地球上を見渡してみてもこの病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない、とも言われています。
さて、歯周病は、歯の周囲の歯ぐきなどの組織に細菌が感染して起こる慢性的な感染症です。
詳しく申し上げますと、歯は通常、歯茎とピタッとくっついていますが、その間に、酸素の嫌いな「偏性嫌気性菌」が巣をつくって溝(歯周ポケット)を広げ、歯の根の周りから炎症を起こして、しまいには歯が抜け落ちてしまう病気です。
感染症ではありますが、最近では「生活習慣病」と捉えられています。
その理由の1つが、どんなに口の中を汚くしていても歯周病にならない体質の人がいる一方、逆に親子で重症の歯周病になるケースもあります。もう1つは、肥満、糖尿病、それにたばこ、ストレスなどを加えた、いわゆる生活習慣病が密接に関係してくると、歯周病になりやすく、重症化しやすいことがわかってきたのです。
複数の遺伝的要因と環境要因が合わさって発症する病気が生活習慣病と定義されます。
糖尿病の人がどれだけ歯周病にかかりやすいかというと、40歳過ぎてなりやすく、ちょうどメタボリックシンドロームになる年齢とかぶさっています。
肥満の人は歯周病になりやすい
肥満に関しては、九州大学の研究者らの有名な調査結果があります。
やせているグループを1とすると、太っている人は3・4倍、さらに重度肥満の人は8・6倍歯周病にかかりやすいことがわかっています。
糖尿病は、6番目の合併症
あらゆる調査によると、糖尿病の方が、糖尿病でない方より2.6倍、歯周病になりやすいことがわかってきています。
つまり肥満で糖尿病だと、これらの数値を掛け合わせたぐらいの頻度で歯周病になりやすいし、メタボリックシンドロームの人は、なおのこと気をつけなければならないわけです。
歯周病というのは、糖尿病の6番目の合併症といわれていたのですが、これからは、メタボリックシンドロームの合併症として考えた方がいいのではないかともいわれています。
歯周病は、嫌気性菌による感染症ではありますが、遺伝や生活習慣が引き金となって発症する生活習慣病としての要素も兼ね備えているという認識がとても大事なのです。
歯周病の嫌気性菌は、強力な毒素を作る
歯周病の嫌気性菌は、酸素が嫌いな菌に特有の強力な毒です。
「内毒素」と呼ばれています。
例えば、高濃度の内毒素を濃縮してネズミに注射すると、ショック死を起こします。人でも抵抗力の弱い高齢者だと、敗血症ショックを起こしかねないのです。
中等度の歯周病になると、炎症の起きている歯茎の粘膜は傷つき、容易に出血し、潰瘍(かいよう)状態になる。例えていえば、黴菌(ばいきん)の詰まったバケツの中に、常に手を突っ込んでいるような状態で、内毒素が体内に入ってくるわけです。
内毒素が糖尿病や肥満に関連してくるメカニズムとは
体内に侵入した内毒素は、毒をやっつける白血球に食われてしまうのですが、その際、白血球は「(腫瘍壊死(しゅようえし)因子の)TNF−α」という生理活性物質を放出します。
TNF−αは、血糖を下げるホルモンのインスリンの働きを悪くするので、血糖が上がってきて糖尿病になりやすくなります。
一方、肥満の人は、内臓脂肪がたまっているので、脂肪組織から、白血球と同じ、炎症性の悪質なサイトカインであるTNF−αを放出してきます。
つまり、歯周病でも肥満であっても、入り口は違うが、出口からは、同じものが放出されてきます。
歯周病も肥満も慢性炎症にかかわる病態なので、こうした悪玉物質が四六時中、出続けるわけです。
結果的にインスリンの働きが邪魔されて血糖が上がり、糖尿病の温床ともなるわけです。
歯周病治療で糖尿病改善
歯周病治療すると、歯周ポケット内の細菌数がたちまち減ってきます。
すると、体内の炎症性サイトカイン「TNF−α」の血中濃度が減少し、インスリンの効きを示す指数(HOMA−R)が改善するわけです。
歯周病を合併した糖尿病の女性患者(48)の場合は、抗生物質などで治療を行い2年間にわたり変化を見たところ、7%を超えていた血糖値指数の「グリコヘモグロビンHbA1c」が6%に下がり、TNF−αの値も減っていたといわれています。
この女性は、まだ糖尿病の域を完全に脱したわけではないが、グリコヘモグロビンHbA1cが1%減ることは、相当意義あることで、手足の切断が40%、失明(網膜症)の原因となる小血管の障害が30%改善されるという海外のデータもあるのです。
個人差があってグリコヘモグロビンHbA1cが1%減ることは少ないですが、0.6%程度減ることはよく報告されています。
(※HbA1c:糖尿病のコントロール)
歯周病が動脈硬化を促進
コレステロールが高いうえに、血糖が上がることによって動脈硬化になり、心筋梗塞(こうそく)などになりやすいことはよく知られています。
ところが、糖尿病患者で歯周病を持っているグループと持っていないグループに分け、頸(けい)動脈の狭窄(きょうさく)度を調べたところ、歯周病群は非歯周病群の2倍以上も狭窄していることがわかってきているそうです。
血液中を流れる糖分やコレステロールの量が同じとしても、歯周病が加わるだけで、これだけ狭窄が高進しているのです。
恐らく動脈硬化も、前述の白血球がどんどん血管の壁に潜って悪玉のLDLコレステロールをくわえ込み、泡沫(ほうまつ)細胞化してアテローム(粥(かゆ)状)、いわゆる動脈硬化の状態になる。歯周病で産生される内毒素が、こうした反応をものすごく加速しているのではないかといわれているのです。
また、歯周病がひどければひどいほど、心筋梗塞や腎症で死亡する危険性が高いというデータもあります。
歯周病は、"沈黙の病気"ともいわれていて、末期になるまでなかなかわからないものです。
歯がぐらぐらしだすと、かなりの末期です。
嫌気性菌は強烈な臭いを発しますから、家族から口臭を指摘されるような人は、すぐ受診してください。
歯周病治療は全身への影響も考えて
われわれ歯科医師が日々の診察で感じていることがあります。
それは、年を老いても元気で活発な人は、イキイキと暮らしている人は、その多くが歯も歯ぐきも丈夫であるということ、なのです。
「歯を失ってはじめて気がつくその大切さ」を痛感します。
ますます高齢化社会をむかえ、自分の歯で噛めるかどうかで人生の晩年における生活の質が大きく違ってまいります。
糖尿病は一生のお付き合いです。
そのなかで歯周病で苦しむことがなければ、より生活の質の向上が期待できるであろうし、歯周病を治療することによって糖尿病の改善も図ることができると思います。
また一方で、歯周病は糖尿病以外の種々の全身疾患(心臓病、肺炎、早産、低体重児出産、好中球減少症、HIV感染症など)とも深く関連しており、患者様には総合的な医療が必要となってまいります。
全身の健康を全て考えた上で歯周病という病気を考えて欲しいと願います。
歯周病について正しい知識を持ち、歯周病菌が媒介となって起こる体へのさまざまな影響を考え治療を進めていくことは非常に大切なことなのです。